大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成10年(特わ)2221号 判決

本店所在地

東京都中央区八重洲一丁目八番一七号

株式会社 マイ・フレンド

(右代表者代表取締役 柿宇土公志)

本店所在地

神奈川県厚木市中町一丁目八番二四号

株式会社 マイ・ベスト

(右代表者代表取締役 柿宇土公志)

本店所在地

埼玉県八潮市大字柳之宮大道通三六四番一

有限会社 大勝産業

(右代表者代表取締役 山﨑正則)

本籍

東京都荒川区南千住五丁目一二三番地

住居

埼玉県八潮市大字柳之宮三六四番地一

会社員

山﨑鋭子

昭和一四年九月七日生

本籍

埼玉県八潮市大字南後谷七六三番地

住居

埼玉県八潮市大字鶴ケ曽根八四〇番地一二

会社役員

柿宇土公志

昭和二四年一一月二三日生

本籍

広島県山県郡筒賀村大字上筒賀五六五番地

住居

千葉県我孫子市岡発戸一二二一番地の八

会社役員

池田正明

昭和二一年二月一九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官永村俊朗及び弁護人保坂志郎、同小川敏夫、藍田耕毅、同内藤平各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社マイ・フレンドを罰金六五〇〇万円に、被告人株式会社マイ・ベストを罰金一〇〇〇万円に、被告人有限会社大勝産業を罰金八〇〇万円に、被告人山﨑鋭子を懲役二年六月に、被告人柿宇土公志を懲役一年六月に、被告人池田正明を懲役一年及び罰金六〇〇万円に、各処する。

被告人池田正明においてその罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から、被告人山﨑鋭子に対し四年間、被告人柿宇土公志に対し三年間、各刑の執行を猶予し、被告人池田正明に対し三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社マイ・フレンド(以下「被告会社マイ・フレンド」という)は、東京都中央区八重洲一丁目八番一七号(平成七年七月二三日以前は同区八重洲二丁目一番四号)に本店を置き、婦人下着の販売を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人株式会社マイ・ベスト(以下「被告会社マイ・ベスト」という)は、神奈川県厚木市中町一丁目八番二四号(平成八年五月二九日以前は東京都文京区湯島四丁目六番一二号)に本店を置き、衣料品販売及び各種催事の企画を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人有限会社大勝産業(以下「被告会社大勝産業」という)は、埼玉県八潮市大字柳之宮大道通三六四番一に本店を置き、健康寝具等の販売を目的とする資本金三〇〇万円(平成七年一一月一三日以前は二〇〇万円)の有限会社であり、被告人山﨑鋭子は、右三被告会社の実質経営者として各会社の業務全般を統括していたもの、被告人柿宇土公志は、被告会社マイ・フレンド及び同マイ・ベストの代表取締役の地位にあるもの、被告人池田正明は、株式会社マイ・フレンドの監査役の地位にあったものであるが、

第一  被告人山﨑及び同柿宇土は、共謀の上、被告会社マイ・フレンドの業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、平成六年二月四日から平成七年一月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が五億九七五八万二七九二円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年三月三一日、東京都中央区新富二丁目六番一号所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三億七六一七万八六三四円であり、これに対する法人税額が一億四四三〇万五九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第一二二六号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二億二五七〇万四二〇〇円と右申告税額との差額八一三九万八三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ、

第二  被告人山﨑、同柿宇土及び同池田は、共謀の上、被告会社マイ・フレンドの業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成七年二月一日から平成八年一月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一三億一〇〇一万九〇六六円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月一日、前記京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇億一一四万三二九八円であり、これに対する法人税額が四億二八四万四八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五億一六三二万六九〇〇円と右申告税額との差額一億一三四八万二一〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ、

二  平成八年二月一日から平成九年一月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が八億五五六〇万二五三六円(別紙1の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年三月三一日、東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六億八七九五万四一一五円であり、これに対する法人税額が二億六九五六万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額三億二九一七万九〇〇円と右申告税額との差額五九六〇万九九〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ、

第三  被告人山﨑及び同柿宇土は、共謀の上、被告会社マイ・ベストの業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の販売手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成六年三月一日から平成七年二月二八日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が二〇三四万三四三三円(別紙2の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年五月一日、東京都文京区本郷四丁目一五番一一号所轄本郷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額がなく、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額六八六万一一〇〇円(別紙5のほ脱税額計算書参照)を免れ、

二  平成七年三月一日から平成八年二月二九日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が八〇二八万一九六七円(別紙2の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月三〇日、前記本郷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三六四万一四四四円であり、これに対する法人税額が一〇〇万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二九三三万四四〇〇円と右申告税額との差額二八三三万三四〇〇円(別紙5のほ脱税額計算書参照)を免れ、

三  平成八年三月一日から平成九年二月二八日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一六六三万三七八六円(別紙2の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月三〇日、神奈川県厚木市水引一丁目一〇番七号所轄厚木税務署において、同税務署長に対し、その所得金額がなく、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の6)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五四七万四二〇〇円(別紙5のほ脱税額計算書参照)を免れ、

第四  被告人山﨑は、被告会社大勝産業の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空役員報酬を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成五年八月一日から平成六年七月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が三七六〇万八一一六円(別紙3の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月三〇日、埼玉県越谷市赤山町五丁目七番四七号所轄越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一九三一万八〇八六円であり、これに対する法人税額が六二七万一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一三一二万八八〇〇円と右申告税額との差額六八五万八七〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ、

二  平成六年八月一日から平成七年七月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が五七二二万五七六五円(別紙3の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年一〇月二日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇〇九万六八六五円であり、これに対する法人税額が六六六万三四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二〇五八万六七〇〇円と右申告税額との差額一三九二万三三〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ、

三  平成七年八月一日から平成八年七月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が六〇二五万七一八円(別紙3の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月三〇日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二三八二万三三一五円であり、これに対する法人税額が八〇九万六七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二一七五万六八〇〇円と右申告税額との差額一三六六万一〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

判示事実全部について

一  被告人山﨑の当公判廷における供述

一  被告人山﨑(乙五)及び同柿宇土(乙二四)の各検察官調書

一  村田清子(甲七一)、原忠夫(甲八三)及び小久保弘(甲一一七)の各検察官調書

判示第一ないし第三の事実全部について

一  被告人柿宇土の検察官調書(乙二一)

一  柿宇土隆嗣の検察官調書(甲一〇九)

判示第一及び第二の事実全部について

一  被告人山﨑(乙二、一一)、同柿宇土(乙一九、二三、二五、三二)及び同池田(乙三七)の各検察官調書

一  村田清子(甲七六)、高桒絹代(甲七七)及び赤居与一(甲七八)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲七、一〇、一三、一六、六八)

一  大蔵事務官作成の同族会社の留保金に対する税額の調査書(甲二二)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙五二)

判示第一、第二の一、第三の二、三の事実について

一  芹田勇の検察官調書(甲八〇)

判示第一及び第二の一の事実について

一  被告人柿宇土の検察官調書(乙二二)

一  芹田勇(甲七二)、鈴木完児(甲八一)及び原忠夫(甲八五)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三、五)

判示第一の事実について

一  芹田勇(甲七三、七四、七九)、安田正春(甲八二)及び原忠夫(甲八四)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二、九、一八、一一八、一一九)

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(平成一〇年押第一二二六号の1)

判示第二の全部及び判示第四の二、三の事実について

一  山﨑久幸の検察官調書(甲八九)

判示第二の事実全部について

一  被告人山﨑(乙六ないし一〇)、同柿宇土(乙二七ないし三一)及び同池田(乙三九ないし四八)の各検察官調書

一  柿宇土隆嗣(甲九〇ないし九三、ただし甲九〇は被告人池田の関係では同意部分のみ)、中村正勝(甲九四)、成田哲(甲九五、九六、ただし被告人池田の関係ではいずれも同意部分のみ)、小久保弘(甲九八)及び土田早苗(甲九九)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四、一一、一二、一五、二一)

判示第二の一の事実について

一  被告人柿宇土の検察官調書(乙二六)

一  芹田勇(甲七五)、原忠夫(甲八六)及び成田哲(甲九七、ただし被告人池田の関係では同意部分のみ)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲一、八、一四、一七、一九)

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(同押号の2)

判示第二の二の事実について

一  原忠夫(甲八七)及び町田隆治(甲八八)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲六、二〇)

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(同押号の3)

判示第三の事実全部について

一  被告人山﨑(乙三、一二)及び同柿宇土(乙二〇、三三)の各検察官調書

一  杉本照子(甲一〇二ないし一〇四)、米田智子(甲一〇五)及び小久保弘(甲一一〇、一一一)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二五ないし二七、二九、三〇、三三、三七、三九、四二、六九)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙五三)

判示第三の一、三の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四〇)

判示第三の一の事実について

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(同押号の4)

判示第三の二、三の事実について

一  原忠夫の検察官調書(甲一〇八)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二四、三一、三四、三八)

判示第三の二の事実について

一  安田正春(甲一〇六)及び加藤昭一(甲一〇七)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二三、二八、三二、三五、四一)

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(同押号の5)

判示第三の三の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三六、一二〇)

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(同押号の6)

判示第四の事実全部について

一  被告人山﨑の検察官調書(乙四、一三)

一  山﨑正則(乙五一)、柿宇土やゑ子(甲一一二)、村田久美(甲一一三)及び小久保弘(甲一一六)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四三ないし四六、四八、五二、七〇)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙五四)

一  越谷税務署長作成の証明書(甲六七)

判示第四の一の事実について

一  加藤昭一の検察官調書(甲一一四)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四七、五三、五四)

判示第四の二、三の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲五〇、五五、五六、一二四)

判示第四の二の事実について

一  原忠夫の検察官調書(甲一一五)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲一二一)

判示第四の三の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四九、五一、一二二、一二三)

(被告人池田の主張について)

被告人池田及び同被告人の弁護人は、判示第二の被告会社マイ・フレンドの各ほ脱事犯に関して、同被告人は、海外へのロイヤリティ送金によるほ脱には関与したが、魚の架空取引、経費の架空ないし水増し計上などその他の方法による脱税については、関与していないし、認識を欠いていたのであって、同被告人の刑事責任は、認識のあった海外へのロイヤリティ送金による脱税の限度にとどまると主張する。

確かに、証拠によれば、判示第二の各ほ脱事犯中、被告人池田の関与については、共犯者である被告人山﨑及び同柿宇土へ脱税手段として海外へのロイヤリティ送金案を示し、意思を相通じて右送金を実行したこと及びこの点につきほ脱結果を認識していたことが認められるものの、この余の手段、方法による同社の脱税の被告人池田が関与したことは証拠上認め難い。

ところで、判示第二の各法人税法違反は、同社の実質的経営者である被告人山﨑及び同社の代表取締役被告人柿宇土と被告人池田との共同正犯の事案であるところ、関係証拠によれば、被告人山﨑及び同柿宇土については、海外へのロイヤリティ送金による脱税方法のみならず、魚の架空取引や経費の架空ないし水増し計上などその他の脱税方法につき明確な認識が認められ、また、そのほ脱結果全体についても認識が認められ、公訴事実どおりの法人税のほ脱犯が成立することが明らかである。

右の場合の法人税のほ脱犯は、一事業年度の正規の全法人税額と申告額の差額として算出されるほ脱税額をもって一罪として成立するものであって、脱税の手段、方法別に別罪として成立するものではないと解される。

被告人池田は、右のように、共同正犯たる被告人山﨑及び同柿宇土について一罪として成立する本件各事業年度におけるほ脱犯に共同正犯として加功したものであり、その脱税の方法や結果の一部に認識を欠いている部分があっても、これは情状として考慮されるにとどまり、被告人池田は、一罪たる本件各事業年度における法人税ほ脱の全体について共同正犯としての責任を負うものというべきである。

(法令の適用)

一  該当法条

1  被告会社三社

被告会社マイ・フレンドの判示第一及び第二の各事実、被告会社マイ・ベストの判示第三の各事実、被告会社大勝産業の判示第四の各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、法人税法一五九条二項(情状による)

2  被告人山﨑

判示第一ないし第四の各所為につき、いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、更に、判示第一及び第三の一の各所為につき平成七年法律第九一号による改正前の刑法六〇条、判示第二及び第三の二、三の各所為につき刑法六〇条

3  被告人柿宇土

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、更に、判示第一及び第三の一の各所為につき平成七年法律第九一号による改正前の刑法六〇条、判示第二及び第三の二、三の各所為につき刑法六〇条

4  被告人池田

判示第二の各所為につき、いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、法人税法一五九条二項(情状による)、刑法六〇条

二  刑種の選択

被告人山﨑、同柿宇土の判示各罪につき懲役刑を、同池田の判示各罪につき懲役刑及び罰金刑を選択

三  併合罪の処理

1  被告会社三社

いずれも刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人山﨑及び同柿宇土

いずれも刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

(犯情の最も重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重)

3 被告人池田

懲役刑 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重)

罰金刑 刑法四五条前段、四八条二項

四 労役場留置

被告人池田の罰金刑につき、刑法一八条

五 執行猶予

被告人山﨑、同柿宇土及び同池田の懲役刑につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告会社マイ・フレンドが三期合計で二億五四〇〇万円余り、被告会社マイ・ベストが三期合計で四〇〇〇万円余り、被告会社大勝産業が三期合計で三四〇〇万円余りの法人税をほ脱した事案であるが、そのほ脱額は、合計で三億二九〇〇万円余りと高額であり、本件各犯行が、被告各会社の従業員、多数の協力会社、知人の協力の下に、組織的に敢行されたものである上、海外へのロイヤリティ名目による送金や、魚の架空取引、諸経費の架空ないし水増し計上によるなど各種の脱税手段、方法が用いられており、巧妙かつ悪質な事案というべきである。

特に、被告人山﨑は、被告会社三社の実質的な経営者として、自己の指揮下の役員、従業員や協力者等に指示するなど、終始主導的、積極的に本件各犯行を敢行しており、同被告人が本件各犯行に及んだ動機が、将来に備え事業資金を蓄えるためであったとしても、正当な理由になり得ないことは明らかである。同被告人の刑事責任は誠に重大であるというべきである。

また、被告人柿宇土は、被告会社マイ・フレンド及びマイ・ベストの代表取締役として、被告人山﨑の腹心として両社の具体的犯行全般にわたり深く関与しており、その責任は重い。

そして、被告人池田は、公認会計士の資格を持ち、被告会社マイ・フレンドの経営コンサルタント、監査役の立場にありながら、脱税手段として海外へのロイヤリティ名目による約三億円の送金を指導し、実行したものであって、犯情は悪質といわざるをえない。

他方、被告人ら三名は、現在では本件各犯行を深く反省しており、二度と脱税を犯さないことを誓っている。また、各被告会社においては、経営の健全化に努め、再び脱税を犯さないための方策を立てているほか、修正申告の上、本税・延滞税・重加算税について既に完納し、地方税関係についても納税に努めている。なお、被告人山﨑においては、これまで被告会社マイ・フレンド等の実績向上に大きな役割を果たしてきたこと、関係したほ脱額合計は多額ではあるが、その全体に占めるほ脱率は約二八パーセントにとどまること、被告人池田においては、本件により公認会計士としての職を失うなど、各被告人につき考慮すべき事情も認められる。

右のような各情状を考慮して、主文のとおりの量刑をしたものである。

(求刑 被告会社マイ・フレンド=罰金八〇〇〇万円、被告会社マイ・ベスト=罰金一二〇〇万円、被告会社大勝産業=罰金一〇〇〇万円、被告人山﨑=懲役二年六月、被告人柿宇土=懲役一年六月、被告人池田=懲役一年・罰金一〇〇〇万円)

(裁判官 池田耕平)

別紙1の1

修正損益計算書

自 平成6年2月4日

至 平成7年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

別紙1の2

修正損益計算書

自 平成7年2月1日

至 平成8年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

別紙1の3

修正損益計算書

自 平成8年2月1日

至 平成9年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

別紙2の1

修正損益計算書

自 平成6年3月1日

至 平成7年2月28日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

別紙2の2

修正損益計算書

自 平成7年3月1日

至 平成8年2月29日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

別紙2の3

修正損益計算書

自 平成8年3月1日

至 平成9年2月28日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

別紙3の1

修正損益計算書

自 平成5年8月1日

至 平成6年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

別紙3の2

修正損益計算書

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

別紙3の3

修正損益計算書

自 平成7年8月1日

至 平成8年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

別紙4

ほ脱税額計算書

自 平成6年2月4日

至 平成7年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

自 平成7年2月1日

至 平成8年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

自 平成8年2月1日

至 平成9年1月31日

株式会社マイ・フレンド

〈省略〉

別紙5

ほ脱税額計算書

自 平成6年3月1日

至 平成7年2月28日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

自 平成7年3月1日

至 平成8年2月29日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

自 平成8年3月1日

至 平成9年2月28日

株式会社マイ・ベスト

〈省略〉

別紙6

ほ脱税額計算書

自 平成5年8月1日

至 平成6年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

自 平成7年8月1日

至 平成8年7月31日

有限会社大勝産業

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例